里帰り出産世帯の離婚率、実は0.26/1000人と推定されています。
これは全国の離婚件数の約17.6%。年離婚確率で見ると、なんと全国平均の約5.76倍なんです。
その根拠と背景を、以下で詳しく解説していきますね。
里帰り出産の離婚率をフェルミ推定で算出してみた【独自分析】
①里帰り出産とは?対象となる夫婦の定義
里帰り出産とは、出産の前後に母親が実家へ帰って出産や育児を行うこと。
今回は「末子が0〜2歳の夫婦で、出産時に里帰り出産を経験した家庭」に絞って、離婚率を推定してみます。
この層を選んだのは、離婚がもっとも起こりやすい時期だからです。
厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査(2022年)』によると、離婚した世帯のうち、「末子が0〜2歳」のタイミングで離婚した家庭は、なんと約40%にも上ります。
つまり、出産から2年以内というのは、夫婦関係にとって非常に揺れやすいタイミング。
だからこそ、里帰り出産がこの時期に与える影響を見てみることで、離婚のリスクがよりリアルに見えてくるんです。
②里帰り出産をする人の割合はどれくらい?
次に、里帰り出産をしている家庭が、どれくらいあるのかを推定します。
まず、2024年の出生数は720,988人(厚生労働省)でした。
そこから、0〜2歳の子どもがいる家庭数を求めると、
720,988人 × 3年分 = 約2,162,964世帯
ここで、日本では婚外子の割合がかなり低く、既婚世帯が全体の約97%を占めています。
そのため、既婚カップルに絞ると...
2,162,964世帯 × 0.97 ≒ 2,098,075組
このうち、里帰り出産を経験した割合については、複数の研究(『日本看護研究学会雑誌(2014年)』『母性衛生(2011年)』)で、39.6〜43%とされています。
中央値の40%を使って計算すると...
2,098,075組 × 0.40 = 約839,230組
つまり、産後2年以内かつ里帰り出産を経験した家庭は、全国でおよそ84万組にのぼると推定されます。
③離婚確率は何%?調査と仮定に基づいた推定値
では、この約84万組のうち、どれくらいの家庭が1年以内に離婚しているのでしょうか。
統計によると、全国の年間離婚件数は183,808組(厚労省『人口動態統計2023』)。
厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査(2022年)』によると、離婚した世帯のうち、「末子が0〜2歳」のタイミングで離婚した家庭は約40%にも上ります。
これを全国の年間離婚件数に反映させると....
183,808組 × 0.40 = 73,523組(年間)
末子0〜2歳の夫婦は2,098,075組なので、産後2年以内の家庭における年間離婚確率は...
73,523 ÷ 2,098,075 ≒ 3.51%/年
ここから、「里帰り出産」が離婚リスクにどう影響するかを見ていきます。
東京学芸大学(2018年)の研究や『小児保健研究 Vol.70』によれば、里帰り出産を経験した家庭では、夫の育児参加や夫婦の満足度が低下しやすい傾向があるとのこと。
このデータをもとに、「相対的に離婚リスクが10%高まる」と仮定します。
3.51% × 1.10 = 3.86%/年
つまり、里帰り出産を経験した家庭では、年間離婚確率は約3.86%と見積もられます。
これを里帰り出産した夫婦数(839,230組)にあてはめると、
839,230組 × 3.86% = 約32,400組/年
④ 全国平均と比べてどれほど高い?離婚率の差に驚き
推定によると、里帰り出産層の離婚は、年間でおよそ32,400件となりました。
では、この数値を日本の総人口(1億2,500万人)にあてはめて、人口あたりの離婚率を出してみましょう。
32,400 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.26/1000人
一方、全国全体の年間離婚率は1.52/1000人です。
つまり、里帰り出産層の離婚率は、全国平均のおよそ17%を占めているということになります。
また、年間32,400件という件数は、1日あたりに換算すると、
32,400 ÷ 365 ≒ 約89組/日
つまり、毎日約89組の夫婦が、里帰り出産から2年以内に離婚している計算です。

さらに、既婚層全体の離婚確率(0.67%)と比べると、里帰り出産層の離婚確率(3.86%)は、約5.8倍のリスクということになります。
ただし、ここまでの推計はあくまで統計データをもとにした数字です。
次は、SNSの投稿や検索行動から、より実態に近い数値を出していきましょう。
SNSと検索データから見えた里帰り出産と離婚の実態
①SNS投稿で見える夫婦のすれ違いと共感の声
「里帰り出産×離婚」に関するSNS投稿600件を分析したところ、ポジティブが204件、ネガティブが234件、中立が162件という内訳でした。
もっとも多かったのはネガティブ投稿で、全体の約39%。
里帰り出産をきっかけに、夫婦関係のズレや違和感を感じている人が一定数いることがわかります。
投稿内容を見ると、「夫が子育てに無関心だった」「会話が激減した」「家事も育児も結局ひとりで背負った」といった声が多数。
「孤独だった」「夫婦関係がギクシャクした」など、感情的なつらさを表現する言葉も目立ちました。
一方で、「実家で体を休められた」「育児の準備が整って安心した」といったポジティブな投稿もあり、全体としては意見が分かれている印象です。
ただ、いいねや共感のリアクションが多くついていたのは、ややネガティブ寄りの投稿でした。
こうした傾向から考えると、SNS上では実際よりも少し強めに離婚リスクが反映されている可能性があります。
これをふまえて、SNS補正係数はやや高めに1.05に設定しました。
② Googleトレンドは語る、減少する関心と地域差
次に、「里帰り出産 離婚」というキーワードでGoogleトレンドを調べてみた結果、ここ5年ほどで検索関心はゆるやかに減少しており、直近1年間の平均検索スコアは25(最大100)とやや低めにとどまっています。
地域別に見ると、大阪府や鹿児島県、福岡県などで検索関心が高い傾向が見られました。
背景としては、地域によって産後ケアや育児支援の充実度に差があり、「里帰りをせず自宅で育児を始める」選択が増えていることがありそうです。
たとえば、東京都の産後ケア事業は年々利用者が増加中で、2023年度は前年比で15%増となっています。
このような傾向をふまえると、「里帰り出産×離婚」への関心は、検索トレンド上ではやや下火になっているようです。
そこでGoogle補正は、やや低めに0.95という係数を設定しました。
③SNSと検索を掛け合わせて見えた真の離婚率
ここまでで設定したSNS補正係数1.05と、検索トレンド補正係数0.95を掛け合わせます。
1.05 × 0.95 = 0.9975
この補正係数をもとに、最初に推定した数値に反映していきます。
年間離婚件数:32,400件 × 0.9975 ≒ 32,349件
年間離婚確率:32,349 ÷ 839,230組 ≒ 3.86%/年
離婚率:32,349 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.26/1000人
これを、1日あたりに直すと…
毎日およそ89組もの里帰り出産家庭の夫婦が、離婚に至っているということですね。
また、この件数は、全国の年間離婚件数183,808件の約17.6%にあたります。

既婚層全体の離婚確率(0.67%)と比べると、里帰り出産層は約5.76倍の離婚リスクがあるんです。
今後、里帰り出産世帯の離婚率はどうなる?未来シナリオ予測
①離婚件数が3割減る?夫婦で準備や支え合うことが浸透した未来
まずは、出産前から家事や育児の役割を夫婦で共有し、里帰り後も積極的に連携し合う...そんな前向きな未来から想像してみましょう。
この場合、現在の年次離婚確率3.86%から、毎年0.15ポイントずつ下がっていくと仮定します。
すると、10年後には…
3.86% − (0.15 × 10) = 2.36%
この2.36%の離婚確率を、該当する里帰り出産世帯数(839,230組)に当てはめてみると、
年間離婚件数:839,230組 × 2.36% = 約19,800件/年
離婚率:19,800 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.16/1000人
1日あたりで見れば、約54組/日の計算です。
ここで注目したいのは、現在の数値(32,349件/年)から、約12,500件もの離婚が削減できるということ。
つまり、毎日34組の夫婦が離婚を回避できる計算になります。

「育児のスタートラインは一緒」。そんな意識をもつだけで、10年後の夫婦関係に大きな変化が生まれそうです。
②離婚確率が4.8%超に?準備・連携不足が招く悪化シナリオ
一方で、出産後も夫が育児に関与せず、母子が実家で過ごす間に心の距離が広がっていく...そんな状況が続いたとしたらどうなるでしょうか。
このネガティブなシナリオでは、離婚確率が年に0.10ポイントずつ上がっていくと仮定します。
すると、10年後には…
3.86% + (0.10 × 10) = 4.86%
この4.86%の離婚確率を、同じく里帰り出産世帯数(839,230組)に当てはめてみると、
年間離婚件数:839,230組 × 4.86% = 約40,760件/年
離婚率:40,760 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.33/1000人
1日あたりでは、約112組もの離婚が発生する計算です。
また、現在の補正後数値(32,349件/年)と比較すると、1年で約8,400件も多くなり、10年で8万件超の差が生じる可能性もあります。
そして、全国平均の離婚確率(0.67%)と比べると、4.86%は約7.3倍に相当します。

体を休めたくて里帰りしたはずが、気づけば夫婦の育児スタートラインに大きな差ができてしまう。それが放置され続けると、こんな未来もあり得るんです。
③ 10年後の差と、今できる対応策
ポジティブな未来(2.36%)とネガティブな未来(4.86%)を比べると、たった10年で約2.5ポイント=約2倍以上もの離婚確率の差がつくことになります。
離婚率も、0.16/1000人 vs 0.33/1000人。
年間離婚件数では19,800件と40,760件という、なんと約20,960件もの違いが生まれます。
この差は、「どんなふうに里帰り出産するか」、そして「どんな育児方法を2人で選ぶか」で変わるんです。
実際にネット上では、以下のような工夫をしている夫婦がいました。
- 出産前に必要な支援リストを夫婦で見える化する
ある家庭では、産後にどんなサポートが必要になるかを「母体の体調」「日常生活」「育児」の3つに分けて書き出していました。 たとえば「ごはんの準備」「掃除や洗濯」「授乳や夜の寝かしつけ」「買い物の付き添い」など、細かな日常の負担をひとつひとつ洗い出し、 その上で「夫がどこまで対応できそうか」「育休や在宅勤務は取れそうか」「外部サービスに頼る部分はあるか」を具体的に検討。 「どうしても難しいなら里帰りしよう」と、お互い納得した選択ができたそうです。 - 夫の父親スイッチを押すために、帰宅後の関わりを計画しておく
里帰りから戻った後、「何をしたらいいか分からない」と感じて育児から一歩引いてしまう夫も多いでしょう。 ある妻は「お風呂はお願いね」「寝かしつけは交代でやろう」と、あらかじめ担当制のような形を作っておくことで、 夫が自然に責任感をもって育児に関われるようにしたそうです。 「あとから任せる」ではなく、「最初から一緒にやることになっている」意識が、父親としてのスイッチを入れる大きなきっかけになります。 - 共に育てるという意識を持って帰省期間を調整する
実家でしっかり休むことも大切ですが、長期間ではなく 「最初の1ヶ月だけ実家で静養し、その後は夫と一緒に育児を始める」という形を選んだ家庭もありました。 この方法なら、母体の回復と夫の育児参加の両方をバランスよく保つことができたとのことです。 「何ヶ月戻るか」は自由に決めていいもの。家族にとってベストなタイミングを一緒に考えることが大切です。 - 妻が我慢して頑張りすぎないようにする
ある妻は、出産で2Lの出血と会陰裂傷を経験し、腰痛や貧血で歩くのも辛い状態が続きました。 当初は「1ヶ月で帰る予定」だった里帰りを、体が回復せず3ヶ月まで延長。その間、夫は育児から遠ざかってしまい、「父親の自覚が持てなかった」といいます。 けれど、妻が「できたことを認めて声をかける」ことで夫の姿勢が変わり、今では積極的に育児に関わっているそうです。 我慢ではなく巻き込む姿勢が夫婦にとって良い結果をもたらすこともあるのです。 - 「どんな育児をしたいか」から逆算して帰省を選ぶ
初めての出産に不安を感じて、「親がいるから安心」「なんとなく里帰り」と決めてしまうケースも多いかもしれません。 けれど、ある家庭では「自分は育児経験者、夫は初心者。最初から大きな差がついてしまった」と後悔の声もありました。 「2人の子どもだから2人で育てたい」という思いがあるなら、最初から同じスタートラインに立つことが大切。 夫婦で希望する育児を共有し、育休取得やサポート体制もふまえた上で、帰省するかどうかを一緒に決めていくのが理想です。 - 実家にお世話になること=夫婦育児を諦めるではないと確認し合う
実家での静養を選んだある夫婦は、「離れていても一緒に育てる」という意識を大切にしていました。 毎日ビデオ通話で、お風呂や寝かしつけの様子を共有。 そのおかげで、夫も「置いてけぼり感」を感じず、育児に関わる心構えをキープできたといいます。 実家に戻るからといって、夫婦育児をあきらめる必要はないんです。 離れていてもできることはたくさんあります。
里帰り出産は、「体を休める」という意味では大切な選択肢。
でも、「夫婦で育てる」という視点を忘れてしまうと、その距離が心の距離にもつながりかねません。

だからこそ、「どんな育児をしたいか」から逆算して選ぶ。その姿勢こそが、10年後の夫婦関係を守る第一歩になるはずです。