敷地内同居の離婚率、実は0.18/1000人と推定されています。
これは全国の離婚件数の約12.5%。年離婚確率で見ると、なんと全国平均の約1.91倍なんです。
その根拠と背景を、以下で詳しく解説していきますね。
敷地内同居の離婚率をフェルミ推定で算出してみた【独自分析】
①敷地内同居とは?対象となる夫婦の定義
ここで扱う「敷地内同居」とは、義両親と同じ敷地内に住みつつ、建物は別々という暮らし方です。
たとえば、母屋と離れ、敷地内に建つ別棟の家などがこれにあたります。
生活空間は分かれていても、物理的・心理的な距離は近いのが特徴です。
②敷地内同居を選んでいる夫婦の割合はどれくらい?
まず、日本全国にいる夫婦は約2,735万組です(厚生労働省『人口動態統計 2023』より)。
このうち、65歳以上の者がいる三世代世帯(= 完全同居に近い概念)は全体の10.2%(内閣府『高齢社会白書(2025)』)とされています。
つまり、残りの約89.8%が「非同居」ということになりますね。
その中で、「妻の母親が同じ敷地内の別棟に住んでいる」割合は、約8.6%というデータがあります(全国家庭動向調査2022より)。
この2つを掛け合わせると、敷地内同居をしている夫婦の割合は次のように推定できます。
0.898(非同居層) × 0.086(敷地内別棟率) ≒ 0.077(約7.7%)
これを全国の夫婦数に当てはめると...
2,735万組 × 7.7% = 約211万組
つまり、敷地内同居している夫婦は、約211万組と推定されます。
③年間の離婚確率は1.09%?公的データに基づく試算結果
Sasaki et al.(2020, Journal of Marriage and Family)によれば、義両親と同居している夫婦は、そうでない夫婦よりも離婚リスクが高まる(調整後オッズ比 1.7倍、妻側親との同居では 2.1倍)という調査結果が出ています。
とはいえ、敷地内同居は「同居」ではあっても建物が別。
生活の一部は分かれているため、完全同居ほどのストレスはかからない可能性があります。
そこで今回は、「物理的・心理的に少し距離がある」ことをふまえて、リスクの上昇幅を30%抑えるという仮定をおきます。
この前提のもとで、敷地内同居の離婚リスクを以下のように見積もります。
1 + (1.9 − 1) × 0.7 = 1.63
全国の夫婦全体の年次離婚確率は0.67%です(厚労省『人口動態統計2023』より)。
それにこのリスク倍率を掛け合わせてみると、
0.67% × 1.63 ≒ 1.09%
この年離婚確率を敷地内同居層に当てはめると...
211万組 × 1.09% ≒ 約23,000組/年
④敷地内同居の離婚率と全国平均との比較
推定によると、敷地内同居層の離婚は年間でおよそ23,000件。
これを日本の総人口(1億2,500万人)にあてはめて、人口あたりの離婚率を出してみましょう。
23,000 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.18/1000人
一方、全国全体の年間離婚率は1.52/1000人です。
つまり、敷地内同居層の離婚率は、全国平均のおよそ12%にあたります。
また、年間23,000件という件数は、1日あたりに換算すると、約63組の夫婦が離婚しているということになります。

さらに、既婚層全体の年間離婚確率(0.67%)と比べると、敷地内同居層の離婚確率は1.09%で約1.63倍もの離婚リスクがあるということなんです。
ただし、ここまでの推計はあくまで統計データをもとにした数字です。
次は、SNSの投稿や検索行動から、より実態に近い数値を出していきましょう。
SNSと検索データから見えた敷地内同居と離婚の実態
①義母ストレスや監視感…投稿に溢れる「限界」の声
SNS上で「敷地内同居」に関する投稿を分析してみると、ネガティブな投稿が225件と、ポジティブな投稿124件を大きく上回っていました。
具体的には、「義母が音に反応して窓を開けて覗いてくる」「窓すら自由に開けられない」など、プライバシーのなさや窮屈さを訴える声が目立ちました。
また、「うつになったのは敷地内同居のせい」「外に出られず引きこもりになった」という、精神面への影響を表すような投稿も。
投稿を分類してみると、「プライバシー侵害・監視・干渉」が74件、「義家族とのトラブル」が69件、「精神的ストレス」が56件と、心身への負担が大きいことがうかがえます。
このように、敷地内同居は見えづらいストレスをため込みやすく、離婚のリスクを上げる要因となっているようです。
そのため、SNS補正係数はやや高めに1.15と設定しました。
②Googleトレンドで見えた地方に根差す問題
Googleトレンドの分析によると、「敷地内同居」というキーワードは2011年ごろから関心が安定して高く、今も継続的に検索されています。
さらに、地域別に見てみると、岐阜・三重・茨城・徳島・山梨など、地方県での検索関心が特に高いという傾向が出ています。
これは、都市部と比べて「土地に余裕がある」「親世代と近くに住む文化が根強い」など、地域特性が反映されていると考えられます。
また、「敷地内同居 離婚率」「敷地内同居 ストレス」など、ネガティブな検索ワードがタイミングによって増加しており、話題化しやすいテーマでもあります。
こうした傾向から、検索データに基づく補正係数は、わずかに高めに1.02と設定しました。
③SNSと検索データから見えた真の離婚リスク
ここまでで設定したSNS補正係数1.15と、検索トレンド補正係数1.02を掛け合わせます。
1.15 × 1.02 = 1.173
この補正係数をもとに、最初に推定した数値に反映していきます。
年間離婚件数:23,000件 × 1.173 ≒ 26,979件
年間離婚確率:26,979 ÷ 2,110,000組 ≒ 1.28%/年
離婚率:26,979 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.22/1000人
そして、1日あたりに直すと…
26,979 ÷ 365 ≒ 約74組/日
つまり、毎日およそ74組の夫婦が、敷地内同居という状況から離婚に至っているということですね。
また、この件数は全国の年間離婚件数183,808件のうち、約14.7%にあたります。

さらに、既婚層全体の離婚確率(0.67%)と比べると、敷地内同居層の1.28%は約1.91倍のリスクがあるんです。
今後、敷地内同居の離婚率はどうなる?未来シナリオ予測
①離婚確率が0.78%まで改善?距離感やルールを大切にした場合の未来
まずは、夫婦が距離感を尊重し合い、義家族との関係に前向きなルール作りをする未来から想像してみましょう。
この場合、現在の年次離婚確率1.28%から、毎年0.05ポイントずつ下がっていくと仮定します。
すると、10年後には…
1.28% − (0.05% × 10年) = 0.78%
この0.78%の離婚確率を、該当する敷地内同居世帯数(211万組)に当てはめてみると、
年間離婚件数:211万組 × 0.0078 = 約16,458件/年
離婚率:16,458 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.131/1000人
1日あたりで見れば、約45件/日。
ここで注目したいのは、現在の数値(26,979件/年)から約10,521件もの離婚が削減できるということです。
つまり、1日あたり約29組の夫婦が離婚を回避できる計算になります。

相手の気持ちを理解しようとするちょっとした行動が、ちょうど良い距離感につながるのかもしれません。
②離婚確率1.78%へ悪化も?理解不足や我慢が続いた場合の未来
一方で、夫婦の間で義実家に関する話し合いができず、ストレスや不満を抱えたままの状況が続いたとしたらどうなるでしょうか。
このネガティブなシナリオでは、離婚確率が年に0.05ポイントずつ上がっていくと仮定します。
すると、10年後には…
1.28% + (0.05% × 10年) = 1.78%
この1.78%の離婚確率を、同じく該当する敷地内同居世帯数(211万組)に当てはめてみると、
年間離婚件数:211万組 × 1.78% = 約37,558件/年
離婚率:37,558 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.30/1000人
1日あたりでは、約103件もの離婚が発生する計算です。
また、現在の数値(約26,900件/年)と比較すると、1年で約10,600件も多くなり、10年で10万件超の差が生じる可能性もあります。
さらに、全国平均の離婚確率(0.67%)と比べると、1.78%は約2.66倍に相当します。

我慢を続けるだけでは、気づかぬうちに夫婦の信頼関係を削っていってしまうかもしれません。
③10年後に見える差と、今すぐ始めたい6つの対策
ポジティブな未来(0.78%)とネガティブな未来(1.83%)を比べると、たった10年で1.05ポイント=約2.3倍もの離婚確率の差がつくことになります。
離婚率も、0.131/1000人 vs 0.309/1000人。
年間離婚件数では16,458件と38,613件という、なんと22,155件もの差が生まれます。
この差は、敷地内同居するに当たって夫婦でどれだけ準備をしたかで変わるんです。
実際にネット上では、次のような対策が取り入れられていました。
- 干渉されない生活動線を最優先に整える
義両親が良い人であっても、常に気配を感じる距離では気が休まりません。ある家庭では、玄関・洗濯物干し・駐車スペースを完全に分離する間取りにしたことで、「アポなし訪問がほぼなくなり、精神的に楽になった」と話していました。 - 介護に関する役割分担を夫婦で事前に話し合う
敷地内同居では、いずれ義親の介護問題が避けられません。あるご夫婦は、義母が元気なうちから「介護は施設中心」「兄弟の役割も明確にする」などを共有し、気持ちの準備ができていたことで、将来への不安が軽減されたと話しています。 - 義両親との生活ルールは文書化して伝える
言葉だけの約束では誤解が生まれやすいため、ある家庭では「訪問前の連絡」「家事への介入禁止」などを紙にまとめて共有しました。その結果、「やってほしくないこと」が明確になり、双方のストレスが減ったといいます。 - 夫が率先して妻を守る行動を示す
義両親との間に立つ姿勢を夫が見せることで、妻の精神的負担が大きく軽減されます。ある家庭では、夫が「介護関係の手続き」「親の病院付き添い」などを率先して行ったことで、「私はサポートされていると感じた」と妻が振り返っています。 - 非同居側の実家との関係も大切にする姿勢を持つ
敷地内同居は、どうしても近居側の実家優先になりがちです。ある夫婦は「月に1回は妻の実家に泊まる日を設ける」と決めたことで、妻の気持ちが軽くなり、同居生活も前向きに捉えられるようになったそうです。 - ルールで縛りすぎないことも大切にする
ルールで縛りすぎると、かえって息苦しくなることもあります。ある妻は「きっちり決めすぎると、毎回守れてるかが気になってしまう」と語り、「少しゆるく、曖昧なままでも許される空気」があったことで関係が保たれたと話していました。
敷地内同居では、毎日の生活のなかに義両親の存在が常にあります。
その距離感が近いからこそ、ちょっとした無理解や行き違いが、大きなストレスに発展してしまいます。
敷地内に家を建てる前に、心の中にも「ここまでは入らないで」という線引きを用意しておくことが大切です。

その線を越えてきたとき、ただ我慢するのではなく、話し合いで伝えられる環境を整えること。それが、10年後の夫婦関係を守る第一歩になるかもしれません。