ワンオペ育児世帯の離婚率、実は0.12/1000人と推定されています。
これは全国の離婚件数の約7.97%。年離婚確率で見ると、なんと全国平均の約2.33倍なんです。
その根拠と背景を、以下で詳しく解説していきますね。
ワンオペ育児の離婚率をフェルミ推定で算出してみた【独自分析】
①ワンオペ育児とは?対象となる夫婦の定義
本分析での「ワンオペ育児」とは、家事や育児のほとんどを母親ひとりで担っている状態のことを指します。
総務省『社会生活基本調査(2021年)』によると、6歳未満の子どもがいる家庭で、母親の育児時間は1日7.5時間、父親はわずか1.2時間。
その差はなんと約6倍で、母親が育児の大部分を一手に引き受けている家庭が多いんです。
また、この年齢層の育児は、夜間対応や育児ストレスによって、夫婦間のすれ違いが生まれやすい時期でもあります。
そこで、ここでは「6歳未満の子どもを持つ、夫の育児参加がほとんどない家庭」をワンオペ育児層として定義しました。
②ワンオペ育児世帯の割合をフェルミ推定
では実際に、ワンオペ育児をしている仮定が全国にどれくらいいるのか、順を追って推定してみましょう。
まず、日本の既婚カップルの数は約2,735万組です(厚生労働省『国民生活基礎調査(2023年)』)。
そして、0〜6歳児の人口は約750万人とされています(総務省『人口推計(2023年)』)。
このうち既婚家庭の割合を60%と仮定 すると...
750万人 × 0.6 ÷ 2 ≒ 225万組
つまり、6歳未満の子を育てている世帯は、全既婚世帯の中でおよそ8.2%(225万組 ÷ 2,735万組)を占めることになります。
さらにそのうち、母親がほぼ1人で育児をしている割合は41.7%(国立社会保障・人口問題研究所、2022年)です。
この2つの割合を掛け合わせると、
2,735万組 × 8.2% × 41.7% ≒ 約93.5万組
つまり、ワンオペ育児の既婚世帯は、全国で約93.5万組と見積もることができます。
③年間の離婚確率と離婚件数を推計
続いて、この93.5万組の中で、どのくらいの人が1年のうちに離婚しているのかを見ていきます。
複数の調査から、ワンオペ育児世帯の離婚リスクは、一般家庭の1.6〜2.3倍とされています。
また、日本総合研究所によると、ワンオペ世帯の離婚確率は14.5%。
このデータをもとに、10年間での累積離婚確率を14.5%と仮定すると、1年あたりの離婚確率は1.45%/年になります。
そのため、年間の離婚件数は...
93.5万組 × 1.45% ≒ 13,558件/年
つまり、ワンオペ育児の家庭では、年間でおよそ1万3,500組以上が離婚している計算になります。
④ワンオペ育児世帯の離婚率と全国平均の比較
推定によると、ワンオペ育児層の離婚は年間でおよそ 13,558件。
これを日本の総人口(1億2,500万人)にあてはめて、人口あたりの離婚率を出してみましょう。
13,558 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.11/1000人
一方、全国全体の年間離婚率は1.52/1000人です。
つまり、ワンオペ層の離婚率は、全国平均のおよそ7.2%を占めているんですね。
また、年間13,558件という離婚件数は、1日あたりに換算するとおよそ37組の夫婦が離婚している計算です。

そして、既婚層全体の離婚確率(0.67%)と比べると、「ワンオペ育児」層の離婚確率は1.45%で、約2.16倍のリスクがあるんです。
SNSと検索データから見えた「ワンオペ育児」離婚
①SNS投稿に見る「限界」「孤独」「もう無理」の声
SNSで「ワンオペ育児」に関する投稿を分析してみると、207件のうち、ネガティブな内容が273件、ポジティブが127件、中立が56件という結果に。
ネガティブ投稿は全体の約60%を占めており、育児疲れやパートナーへの不満、「限界だ」と訴える内容が目立ちます。
たとえば、「自分だけが育児している気がする」「夜中に3回も授乳してるのに、夫はグーグー寝てる」といった、日常の不公平感が明確に表れていました。
こうした投稿からは、「ひとりで抱え込んでしまう孤立感」や「誰にも気づかれない苦しみ」が、やがて離婚という選択につながる要因になると推測できます。
このような投稿内容の偏りや深刻さを踏まえ、SNS分析による補正係数はやや高めに「1.2」と設定しました。
②Googleトレンドで浮かび上がった地域性と関心度
「ワンオペ育児 離婚」というキーワードは、2017〜2019年に検索数が急増。
その後も断続的に検索され続けており、関心の高さがうかがえます。
さらに、地域別で見ると奈良県・沖縄県・滋賀県が上位。
これは、都市近郊で通勤時間が長いエリアや、育児支援が手薄な地域でワンオペ感が強まっていることの表れかもしれません。
たとえば沖縄県では、出生率は全国的に高い一方で、保育施設や家族支援制度の整備が十分ではないとされており、育児の負担が家庭に偏りやすい状況があります。
とはいえ、検索が集中していたのは一部の地域に限られており、全国的に広く関心が持たれているとは言い切れません。
それを踏まえて、検索トレンドによる補正係数はやや低めの「0.9」に設定しました。
③SNSと検索からわかるすれ違いの実態
ここまでで設定したSNS補正係数1.2と、検索トレンド補正係数0.9を掛け合わせます。
1.2 × 0.9 = 1.08
この補正係数をもとに、最初に推定した数値に反映していきます。
年間離婚件数:13,558件 × 1.08 ≒ 14,643件
年間離婚確率:14,643 ÷ 935,000 ≒ 1.56%/年
離婚率:14,643 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.12/1000人
そして、1日あたりに直すと…
14,643 ÷ 365 ≒ 約40組/日
つまり、毎日およそ40組の夫婦が、「ワンオペ育児」をきっかけに離婚しているということですね。
また、この件数は全国の年間離婚件数183,808件のおよそ7.97%にあたります。

既婚層全体の離婚確率(0.67%)と比べると、ワンオペ育児層は約2.33倍の離婚リスクがあるんです。
今後ワンオペ世帯の離婚率はどうなる?未来シナリオ予測
①支援や育児分担が進めば離婚件数は半減?改善シナリオの未来予測
まずは、育児支援制度や柔軟な働き方、そして夫婦間での家事・育児分担の見直しが進んだ未来を想像してみましょう。
この場合、現在の年次離婚確率1.56%から、毎年0.15ポイントずつ下がっていくと仮定します。
すると、10年後には…
1.56% − (0.15 × 10) = 0.06%
この0.06%の離婚確率を、該当するワンオペ育児世帯数(93.5万組)に当てはめてみると、
年間離婚件数:935,000組 × 0.06% = 約561件/年
離婚率:561 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.004/1000人
1日あたりで見れば、約1.5件/日。
ここで注目したいのは、現在の数値(14,643件/年)から約14,082件もの離婚が削減できるということです。
つまり、1日あたり約39組の夫婦が離婚を回避できる計算になります。

「夫婦が一緒に育てる」が当たり前になることで、穏やかな家庭が増えていくんですね。
②離婚確率3.5%に上昇?悪化シナリオの行き着く先
一方、育児支援が限られ、働き方も変わらず、家庭内の分担や夫婦の対話も改善されない…。
そんな状況が続いたとしたらどうなるでしょうか。
このネガティブなシナリオでは、離婚確率が年に0.2ポイントずつ上がっていくと仮定します。
すると、10年後には…
1.56% + (0.2 × 10) = 3.56%
この3.56%の離婚確率を、同じく該当するワンオペ育児世帯数(93.5万組)に当てはめてみると、
年間離婚件数:935,000組 × 3.56% ≒ 約33,266件/年
離婚率:33,266 ÷ 125,000,000 × 1000 ≒ 0.27/1000人
1日あたりでは、約91件もの離婚が発生する計算です。
また、現在の数値(14,643件/年)と比較すると、1年で約18,623件も多くなり、10年で18万件超の差が生じる可能性もあります。
そして、全国平均の離婚確率(0.67%)と比べると、3.56%は約5.3倍に相当します。

育児を「母親だけの仕事」として放置すれば、家庭崩壊のリスクはどんどん高まるんです。
③10年後に何が変わる?いま私たちが取れる行動とは
ポジティブな未来(0.06%)とネガティブな未来(3.56%)を比べると、たった10年で約3.5ポイント=約59倍もの離婚確率の差がつくことになります。
離婚率も、0.004/1000人 vs 0.27/1000人。
年間離婚件数では、561件と33,266件という、なんと約32,700件もの違いが生まれます。
この差は、育児が「1人で抱えるもの」か「家族で取り組むもの」かで、家族の未来が大きく変わることを意味していますね。
実際にネット上では、「工夫してみたら夫が変わった」「思いきって頼ってみて楽になった」などの前向きな声も見られます。
- 子育ての見える化ノートを作る
ある家庭では、「今日の子どもの様子」「夜泣きの回数」「食べたもの」などを簡単に書いた育児ノートを夫婦で共有。 忙しい夫でも子どもの様子が分かり、自然と会話や関心が増えたそうです。 夫が育児に参加しやすくなるきっかけになったとのこと。 - 夫専用の育児タスクを設ける
妻が「お風呂だけはパパ担当」と決めたことで、夫に役割が明確になり、育児に対する責任感が芽生えたというケースも。 毎日同じタスクを続けることで「これだけは任せて」と言える分野ができ、夫婦の信頼感が深まったそうです。 - 子どもとパパの2人きり時間をあえて作る
「夫が子どもと距離がある」と感じた家庭では、意識的に母親抜きの時間を設けたそうです。 最初はぎこちなかったものの、子どもが少しずつ懐くようになり、夫も育児への意識が大きく変わったとのこと。 - 「ひとり育児時間」の限界を共有する
トイレにも行けない、食事も中断される。 そんなリアルなワンオペのつらさを夫に隠さず伝えたことで、ようやく事態の深刻さに気づいてもらえたという声もありました。 見えにくい負担ほど、言葉にして伝えることが重要です。 - 家庭内LINEグループで連絡のハードルを下げる
忙しい夫に対して「ちゃんと話す時間が取れない」ことがストレスだった妻がLINEを活用。 短文で「おむつ足りない」「今日は20時にお風呂入れてほしい」など要望を伝えることで、衝突が減ったそうです。 - ママの「自由時間」を夫の役割として確保する
「毎週日曜の午前中は、ママは外出OK」というルールを作った家庭では、母親の心のゆとりが明らかに変化。 夫にとっても任された時間として責任が芽生え、育児参加への自覚が強まったとのことです。
ワンオペ育児のつらさは、マルチタスクな妻たちが、シングルタスクで不器用な夫にイライラしてしまうことからも生まれます。
調べればすぐ分かるようなことでも、なぜか自分では調べない。そんな夫の姿に、つい責めたくなる瞬間も。
けれど、「育児に慣れていないだけ」と思って、否定せずに育つのを待つ姿勢が、結果的には自分を楽にしてくれるんです。
どんなに小さなことでも「やってくれたら褒める」。それが、夫婦のチームワークを育てる近道なのかもしれません。

10年後、「あのとき我慢してよかった」と笑い合える日を目指して、今できる小さな一歩を大切にしていきましょう。