「離婚率は3組に1組」。
そう聞くたびに、おかしいと思った人は多いはずです。
だって、自分の周りを見渡しても、離婚した夫婦なんてそんなにいない。
なのにニュースやネットでは、当たり前のように「3組に1組」と言われる。
この違和感、あながち間違いでもないんです。
面白いことに、「離婚率がおかしい」と感じる人の理由は、実は1つではありません。
大きく分けて4つあります。
そもそも「離婚率」と呼ばれる数字は1種類ではなく、知りたい内容ごとに見るべき数字が違います。
このことについて、以下で詳しく解説していきます。
なぜ離婚率がおかしい論争は結論が出ないのか
ネットではよく「3組に1組が離婚って本当?」という話題が出ます。
否定する人もいれば、いや実際にそうだ、と擁護する人もいる。
どちらも統計を持ち出してくるのに、なぜか話が噛み合いません。
理由はシンプルで、みんなが違う数字を見ながら、同じ離婚率という言葉について話しているからです。
実は離婚率と呼ばれているものは、1種類ではありません。
計算の仕方が違う数字が、少なくとも4つあります。
特殊離婚率、普通離婚率、有配偶離婚率、そして生涯で離婚する確率。
どれも離婚率と呼ばれるのに、出てくる数字は10倍近く違うこともある。
だから、ある人は3組に1組を見て、別の人は1000組に6組を見ていたりする。
それで論争になるのは、ある意味で当然なんです。
つまり「3組に1組は本当か?」という問いそのものがズレている。
正しい問いは、あなたが知りたいのはどの離婚率なのか、です。
離婚率の違和感、数字のトリックかも
よく言われる3組に1組のからくりを、例え話を使って説明しましょう。
ある会社が、こんな計算をしたとします。
今年の新入社員は100人。今年辞めた社員は33人。だからうちは3人に1人が辞める会社です。
なんだか辞めすぎな会社に聞こえますよね。
でも、よく考えてみてください。
今年辞めた33人は、今年入った新人ばかりではありません。
10年前、20年前に入った大ベテランも含まれています。
それなのに、辞めた人数を今年の新人の数だけで割ってしまった。
これだと、新人がたまたま少ない年は、退職率がものすごく高く見えてしまいます。
3組に1組が離婚も、まったく同じ仕組みで出てきた数字です。
割り算の分母と分子が、別の人たちを指している。
詳しくは後で説明しますが、それだけで数字は簡単に大きくなる、ということを覚えておいてください。
「離婚率がおかしい」と感じる理由は4つに分かれる
「離婚率がおかしい」と感じる理由は、だいたい次の4つのどれかに当てはまるはずです。
- 周りにいない:周りに離婚した人なんて、そんなにいない気がする
- 減ってないはず:離婚は昔よりずっと増えていると思っていた
- 多すぎでは:3組に1組はいくらなんでも多すぎる
- 本当のところは?:結局、一生のうちで離婚する人は何%なのか
自分はこれだ、というものが見つかったでしょうか。
下の表が、感じ方ごとに見るべき数字の対応表です。
| 感じている疑問 | 見るべき数字 |
|---|---|
| 周りに離婚した人がいない | いま結婚している人が1年で離婚する割合(約0.6%) |
| 昔よりずっと増えていると思っていた | 人口あたりの離婚の多さの推移(2002年をピークに減少) |
| 3組に1組は多すぎる | 特殊離婚率(3組に1組の正体・計算のトリック) |
| 結局ほんとのところは? | 一度でも離婚を経験する人の割合(およそ2割) |
ここから、疑問ごとに答えを解説していきます。
離婚は今も昔より増えていない|1年あたりは既婚者の0.6%
まずは周りにいないと、昔より増えていると思っていた、の2つから。
この2つはつながっているので、まとめて見ていきます。
1年で離婚するのは、既婚者の約0.6%
周りに離婚した夫婦なんて、ほとんどいない。
その感覚、数字とちゃんと一致しています。
いま、日本で結婚している夫婦は、ざっと約3000万組です。
そのうち、1年間に離婚するのは約18万組(出典:厚生労働省 人口動態統計・2024年・T1)。
これを割ると、こうなります。
18万 ÷ 3000万 = およそ0.6%。
つまり、いまこの瞬間に結婚している人のうち、1年で別れるのは1000組に6組ほど。
100組いても、1年で離婚するのは1組いるかいないか、という割合です。
これなら周りにそんなにいないという体感と、ぴったり合いますよね。
あなたの感覚はおかしくありません。
3組に1組のほうが、体感とズレた数字だったんです。
人口あたりの離婚は、20年以上前から減っている
次に、昔よりずっと増えているはず、という思い込みを確かめてみましょう。
人口に対する離婚の多さは、普通離婚率という数字で見ます。
人口1000人あたり、その年に何組が離婚したかを表したものです。
この数字は2002年に2.30まで上がり、これが戦後の最高でした。
ところが、そこからはずっと下がり続けています。
2024年は1.55、そして2025年は1.50まで落ちました(出典:厚生労働省 人口動態統計・令和7年概数・T1)。
離婚の件数そのものも、2025年は前の年より減りました。
ずっと増え続けているイメージとは、まるで逆なんですよね。
増えていると思っていたのが、実はもう20年以上前から減っている。
ここが、最初の大きなギャップです。
共働きで離婚が増えた、というのも実は逆
増えていると感じる人の頭には、こんな理屈があるかもしれません。
共働きが当たり前になって、女性が一人でも生きていけるようになった。
だから我慢せず離婚する人が増えたはずだ、と。
そこで、結婚している女性が離婚する割合を、同じ年代の10年前と比べてみます。
結婚している女性1000人あたりで離婚する人の数は、25〜29歳で2010年の約97人から2020年の約69人へ。
30〜34歳でも約80人から約57人へと、どちらの年代もおよそ3割減っています(出典:国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2026・表6-9・T1)。
別れやすいと言われる若い世代ですら、昔の同じ年代より離婚していないんです。
共働きで離婚が増えた、という説は、データで見るとむしろ逆。
なんとなく増えている気がするのは、離婚という話題を見聞きする機会が増えただけ、という面が大きそうです。
「3組に1組」は割り算が生んだ錯覚|特殊離婚率のトリック
3組に1組は多すぎる、という感覚も、これまた正解です。
この数字の正体は、特殊離婚率と呼ばれるものです。
計算式はとても単純で、こうなっています。
その年の離婚件数 ÷ その年の婚姻件数。
2025年で計算すると、こうです。
離婚17万9068組 ÷ 婚姻48万9119組 = 約36.6%(出典:厚生労働省 人口動態統計・令和7年概数・T1)。
確かにざっくり3組に1組です。
でも、ここで冒頭の会社の例えを思い出してください。
今年の新入社員の数で、今年の退職者の数を割る、あの計算。
特殊離婚率は、まさにそれと同じことをやっています。
分母の婚姻件数は今年結婚した夫婦です。
ところが分子の離婚件数は、今年離婚した夫婦。
今年離婚した人の大半は、5年前、10年前、20年前に結婚した人たちです。
つまり、まったく別の世代の数字を、無理やり同じ年で割っている。
今年結婚した3組のうち1組が離婚する、という意味では全くないんです。
結婚が減ったぶん、錯覚はさらに大きくなる
この話には、もうひとつ注目すべき点があります。
割り算の分母、つまり結婚する人の数が、昔に比べてガクッと減っているんです。
結婚の件数は、1972年の約109万9984組をピークに、ずっと減ってきました。
2024年には約48万5063組。
ピーク時のおよそ44%、半分以下です(出典:厚生労働省 人口動態統計・T1)。
先ほどの会社の例えで言えば、新入社員がどんどん減っている状態。
分母が小さくなれば、同じ退職者数でも割合は跳ね上がります。
離婚する人が増えたから3組に1組になったのではなく、結婚する人が減ったから比率が大きくなった。
ここが、特殊離婚率の一番ややこしいところなんですよね。
数字そのものは嘘ではありません。
ただ、読み方を間違えると、おかしいと感じてしまうんですよね。
一生で離婚する人は約2割|「3組に1組」との違い
最後に、多くの方はこう思っているのではないでしょうか。
で、結局、一生のうちで離婚する人ってどれくらいなの、と。
本当に知りたいのは、たぶんこれですよね。
結論から言うと、一生のうちに一度でも離婚を経験する人は、おおむね2割です。
厚生労働省が、年齢の偏りをならして算出した数字で、2000年と2005年の時点で男性が約21%、女性が約22%(出典:厚生労働省 人口動態統計特殊報告・T1)。
最新の2020年で計算し直しても、だいたい2割から2割5分のあたりに収まります。
結婚ごとに数えると生涯で約32%
一方、結婚した人が生涯で離婚する割合を、結婚ごとに数えると約32%になります(出典:厚生労働省「令和4年度 人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計」・T1)。
さきほど見た特殊離婚率(3組に1組)とは別の数字で、こちらは一生をかけて見た割合です。
2割と32%、なぜこんなに差が出るのか。
理由は、1人で2回3回と離婚する人がいるからです。
結婚ごとに数えると、その人の離婚は何度もカウントされます。
でも、人単位で見れば、1回しかカウントされません。
実際、再婚を含む結婚は今や全体の4組に1組以上を占めていて、2024年は夫の17.9%、妻の15.6%が再婚でした(出典:厚生労働省 人口動態統計・T1)。
一度離婚した人が、また結婚して、また離婚する。
1人の離婚が何度も数に入るぶん、結婚を数えた割合のほうが高く出ます。
つまり、人単位で見れば約2割、結婚ごとに数えれば約32%。
どちらも正しくて、数えている対象が違うだけ。
日本人が一生のうちに離婚する割合を知りたいなら、見るべきは人単位で数えた約2割のほうです。
約2割と32%は推計が入った数字
ひとつ、注意点があります。
人を数えた約2割は、2000年と2005年の実測をもとにした数字で、最新の2020年ぶんは、そこからの見積もりが入っています。
結婚を数えた約32%のほうは、ある時点の離婚しやすさがこの先も続くと仮定して計算した、期間指標と呼ばれる推計です。
どちらも「この通りになると確定した未来」ではありません。
それでも、いま公的に手に入る数字としては、もっとも実態に近いところです。
離婚率に関する4つの「おかしい」への答え
最後に、もう一度まとめておきます。
| 感じている疑問 | 見るべき離婚率 | 数字 | 信頼度 |
|---|---|---|---|
| 周りに離婚した人がいない | 既婚者が1年で離婚する割合 | 約0.6%/年 | 体感と一致 |
| 昔よりずっと増えていると思っていた | 普通離婚率(人口千対) | 1.50・2002年から減少 | 確定値 |
| 3組に1組は多すぎる | 特殊離婚率 | 36.6%・割り算の錯覚 | 誤解を招きやすい |
| 結局ほんとのところは? | 一度でも離婚を経験する人の割合 | 約2割(人ベース) | 自分に一番近い |
こうして並べると、はっきりします。
離婚率がおかしいと感じた人たちは、誰も間違っていませんでした。
ただ、見ている数字がそれぞれ違っただけ。
周りにいないと感じた人は、1年あたりの0.6%を体感していた。
多すぎると感じた人は、特殊離婚率のトリックを直感で見抜いていた。
そして、本当に知りたかった、日本人が一生のうちに離婚する割合は、人単位で数えれば約2割。
結婚の回数で数えれば、約32%にもなる。
違うのは、どの数字を見ているのか。
そう考えると、あなたが「離婚率がおかしい」と感じた違和感は、最初から正しかったわけです。
どの数字が何を数えているのかさえ見分けられれば、もう離婚率がおかしいと感じることはありません。