「離婚率は3組に1組」と聞くたびに、おかしいと思った人は多いはずです。
だって、自分の周りを見渡しても、離婚した夫婦なんてそんなにいない。
なのにニュースやネットでは、当たり前のように「3組に1組」と言われる。
この違和感、あながち間違いでもないんです。
面白いことに「離婚率がおかしい」と感じる理由は1つではなく大きく分けて4つあり、そもそも離婚率も1種類ではないので知りたい内容ごとに見るべき数字が変わってきます。
このことについて、以下で詳しく解説していきます。
離婚率は種類ごとに60倍以上違う
ネットではよく「3組に1組が離婚って本当?」という話題が出ます。
否定する人もいれば、いや実際にそうだと擁護する人もいて、どちらも統計を持ち出してくるのになぜか話が噛み合いません。
理由は、みんなが違う数字を見ながら、同じ離婚率という言葉について話しているからです。
実は離婚率は1種類ではなく、計算の仕方が違う数字が少なくとも4つあります。
特殊離婚率、普通離婚率、有配偶離婚率、そして生涯で離婚する確率。
どれも離婚率と呼ばれるのに出てくる数字は60倍以上違うこともあるので、ある人は3組に1組を見て、別の人は1000組に6組を見ながら話しているというすれ違いが起きます。
それで論争になるのは、ある意味で当然なんですよね。
つまり「3組に1組は本当か?」という問いそのものがズレている。
正しい問いは、あなたが知りたいのはどの離婚率なのか、です。
会社で言えば新入社員100人に退職者33人
よく言われる3組に1組の仕組みを、例え話で説明しましょう。
ある会社がこんな計算をしたとします。
今年の新入社員は100人。今年辞めた社員は33人。だからうちは3人に1人が辞める会社です。
なんだか辞めすぎな会社に聞こえますよね。
でも、よく考えてみてください。
今年辞めた33人は今年入った新人ばかりではなく10年前や20年前に入った大ベテランも含まれているのに、辞めた人数を今年の新人の数だけで割ってしまっています。
これだと、新人がたまたま少ない年ほど退職率がものすごく高く見えてしまうわけです。
3組に1組が離婚も、まったく同じ仕組みで出てきた数字です。
割り算の分母と分子が別の人たちを指している。
詳しくは後で説明しますが、それだけで数字は簡単に大きくなるということを覚えておいてください。
離婚率がおかしいと感じる理由は4つ
「離婚率がおかしい」と感じる理由は、だいたい次の4つのどれかに当てはまるはずです。
- 周りにいない:周りに離婚した人なんて、そんなにいない気がする
- 減ってないはず:離婚は昔よりずっと増えていると思っていた
- 多すぎでは:3組に1組はいくらなんでも多すぎる
- 本当のところは?:結局、一生のうちで離婚する人は何%なのか
自分はこれだ、というものが見つかったでしょうか。
下の表が、感じ方ごとに見るべき数字の対応表です。
| 感じている疑問 | 見るべき数字 |
|---|---|
| 周りに離婚した人がいない | いま結婚している人が1年で離婚する割合(約0.6%) |
| 昔よりずっと増えていると思っていた | 人口あたりの離婚の多さの推移(2002年をピークに減少) |
| 3組に1組は多すぎる | 特殊離婚率(3組に1組の正体) |
| 結局ほんとのところは? | 一度でも離婚を経験する人の割合(およそ2割) |
ここから、疑問ごとに答えを解説していきます。
離婚率は今も昔より増えていない
周りにいない、昔より増えていると思っていた。この2つには共通点があります。
1年で離婚するのは既婚者の約0.6%
周りに離婚した夫婦なんてほとんどいない。
その感覚、数字とちゃんと一致しています。
いま日本で結婚している夫婦はざっと約3000万組で、そのうち1年間に離婚するのは約18万組です(出典:厚生労働省 人口動態統計・2024年・T1)。
これを割ると、こうなります。
18万 ÷ 3000万 = およそ0.6%。
つまり、いまこの瞬間に結婚している人のうち1年で別れるのは1000組に6組ほどで、100組いても1年で離婚するのは1組いるかいないかという割合です。
これなら周りにそんなにいないという体感と、ぴったり合いますよね。
あなたの感覚はおかしくありません。
3組に1組のほうが、体感とズレた数字だったんです。
人口あたりの離婚率は20年以上前から減っている
次に昔よりずっと増えているはず、という思い込みを確かめてみましょう。
人口に対する離婚の多さは普通離婚率という数字で見ます。
人口1000人あたり、その年に何組が離婚したかを表したものです。
この数字が戦後で最も高かったのは2002年の2.30で、そこからはずっと下がり続けて2024年は1.55、2025年は1.50まで落ちました(出典:厚生労働省 人口動態統計・令和7年概数・T1)。
離婚の件数そのものも、2025年は前の年より減っています。
ずっと増え続けているイメージとは、まるで逆なんですよね。
増えていると思っていたのが、実はもう20年以上前から減っている。
ここが、最初の大きなギャップです。
共働きが増えても若い世代の離婚率は3割減っている
増えていると感じる人の頭には、こんな理屈があるかもしれません。
共働きが当たり前になって、女性が一人でも生きていけるようになった。
だから我慢せず離婚する人が増えたはずだ、と。
そこで結婚している女性が離婚する割合を、同じ年代の10年前と比べてみます。
結婚している女性1000人あたりで離婚する人の数は、25〜29歳で2010年の約97人から2020年の約69人へ。
30〜34歳でも約80人から約57人へと、どちらの年代もおよそ3割減っています(出典:国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2026・表6-9・T1)。
別れやすいと言われる若い世代ですら、昔の同じ年代より離婚していないんです。
共働きで離婚が増えたという説は、データで見るとむしろ逆。
なんとなく増えている気がするのは、離婚という話題を見聞きする機会が増えただけ、という面が大きそうです。
3組に1組と言われるのは特殊離婚率
3組に1組は多すぎる、という感覚もこれまた正解です。
この数字の正体は特殊離婚率と呼ばれるもので、計算式はとても単純です。
その年の離婚件数 ÷ その年の婚姻件数。
2025年で計算すると、こうです。
離婚17万9068組 ÷ 婚姻48万9119組 = 約36.6%(出典:厚生労働省 人口動態統計・令和7年概数・T1)。
確かにざっくり3組に1組です。
でも、ここで冒頭の会社の例えを思い出してください。
今年の新入社員の数で、今年の退職者の数を割る、あの計算。
特殊離婚率はまさにそれと同じことをやっています。
分母の婚姻件数は今年結婚した夫婦なのに、分子の離婚件数は今年離婚した夫婦で、その大半は5年前や10年前、20年前に結婚した人たちです。
つまり、まったく別の世代の数字を無理やり同じ年で割っているだけで、今年結婚した3組のうち1組が離婚するという意味では全くないんです。
結婚が半分以下に減ったから3組に1組に見える
この話には、もうひとつ注目すべき点があります。
割り算の分母、つまり結婚する人の数が、昔に比べてガクッと減っているんです。
結婚の件数は1972年の約109万9984組をピークにずっと減り続けて2024年には約48万5063組、ピーク時のおよそ44%と半分以下になりました(出典:厚生労働省 人口動態統計・T1)。
先ほどの会社の例えで言えば、新入社員がどんどん減っている状態。
分母が小さくなれば、同じ退職者数でも割合は跳ね上がります。
離婚する人が増えたから3組に1組になったのではなく、結婚する人が減ったから比率が大きくなった。
ここが、特殊離婚率の一番ややこしいところなんですよね。
数字そのものは嘘ではありません。
ただ、読み方を間違えると、おかしいと感じてしまう。
一生のうちの離婚率は人単位で約2割
それでも、多くの方はこう思っているのではないでしょうか。
で、結局、一生のうちで離婚する人ってどれくらいなの、と。
本当に知りたいのは、たぶんこれですよね。
結論から言うと、一生のうちに一度でも離婚を経験する人は、おおむね2割です。
厚生労働省が年齢の偏りを調整して算出した数字で、2000年と2005年の時点で男性が約21%、女性が約22%でした(出典:厚生労働省 人口動態統計特殊報告・T1)。
最新の2020年で計算し直しても、だいたい2割から2割5分のあたりに収まります。
結婚単位で見ると生涯離婚率は約32%
一方、結婚した人が生涯で離婚する割合を結婚ごとに数えると、約32%になります(出典:厚生労働省「令和4年度 人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計」・T1)。
さきほど見た特殊離婚率(3組に1組)とは別の数字で、こちらは一生をかけて見た割合です。
2割と32%、なぜこんなに差が出るのか。
理由は1人で2回3回と離婚する人がいるからです。
結婚ごとに数えるとその人の離婚は何度もカウントされますが、人単位で見れば1回しかカウントされません。
実際、再婚を含む結婚は今や全体の4組に1組以上を占めていて、2024年は夫の17.9%、妻の15.6%が再婚でした(出典:厚生労働省 人口動態統計・T1)。
一度離婚した人が、また結婚して、また離婚する。
1人の離婚が何度も数に入るぶん、結婚を数えた割合のほうが高く出ます。
つまり、人単位で見れば約2割、結婚ごとに数えれば約32%。
どちらも正しくて、数えている対象が違うだけ。
日本人が一生のうちに離婚する割合を知りたいなら、見るべきは人単位で数えた約2割のほうです。
約2割と32%は推計が入った数字
ひとつ、注意点があります。
人を数えた約2割は2000年と2005年の実測をもとにした数字で、最新の2020年ぶんにはそこからの見積もりが入っています。
結婚を数えた約32%のほうは、ある時点の離婚しやすさがこの先も続くと仮定して計算した期間指標と呼ばれる推計です。
どちらも「この通りになると確定した未来」ではありません。
それでも、いま公的に手に入る数字としては、もっとも実態に近いところです。
離婚率がおかしいと感じた人は誰も間違っていない
ここまでを、表にして振り返ります。
| 感じている疑問 | 見るべき離婚率 | 数字 | 信頼度 |
|---|---|---|---|
| 周りに離婚した人がいない | 既婚者が1年で離婚する割合 | 約0.6%/年 | 体感と一致 |
| 昔よりずっと増えていると思っていた | 普通離婚率(人口千対) | 1.50・2002年から減少 | 確定値 |
| 3組に1組は多すぎる | 特殊離婚率 | 36.6%・割り算の錯覚 | 誤解を招きやすい |
| 結局ほんとのところは? | 一度でも離婚を経験する人の割合 | 約2割(人ベース) | 自分に一番近い |
こうして比べると、はっきりします。
離婚率がおかしいと感じた人たちは誰も間違っていませんでした。
ただ、見ている数字がそれぞれ違っただけ。
周りにいないと感じた人は1年あたりの0.6%を体感していましたし、多すぎると感じた人は特殊離婚率のトリックを直感で見抜いていました。
そして本当に知りたかった、日本人が一生のうちに離婚する割合は、人単位で数えれば約2割、結婚の回数で数えれば約32%にもなります。
違うのは、どの数字を見ているのか。
そう考えると、あなたが「離婚率がおかしい」と感じた違和感は最初から正しかったわけです。
どの数字が何を数えているのかさえ見分けられれば、もう離婚率がおかしいと感じることはありません。